サリエーリ音楽塾 コラム |
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ベルリン・フィルのティンパニ |
カラヤン時代のベルリン・フィルは レアル・マドリッド顔負けの宇宙軍団だ。 もう名手名手!有難みが薄れるかの如き名手のオン・パレード。 今回はその中でティンパニ・パートを取り上げてみたい。 ティンパニといえば、その魅力は「音」。 楽器なんだからそりゃ当然なんだけど、 特にティンパニはビートを刻み続けたりするわけじゃないのでテクニックが見えにくい。 そのぶん、たった「一音」が勝負を分けたりするのだ。 1970年代のベルリンには、テーリヒェンとフォーグラーという2人の名手がいた。 今回はその凄い音が聴ける部分を紹介しよう。 1. チャイコフスキー交響曲第5番 録音:1971年 チャイコフスキーはカラヤンの資質によく合っているので名演が多く、 特に交響曲は4〜6番を生涯に何度も繰り返し録音している。 その中でもティンパニの凄音が聴けるのが71年録音の第5番だ。 第4楽章コーダ直前の連打!! ここでティンパニを担当しているのはテーリヒェンだ(と言われている。音からするとフォーグラーに聞こえるのだが)。 地の底から湧き上がるような震動。 綺麗なだけがカラヤンの演奏ではないのだぜ! 2. リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」 録音:1973年 R・シュトラウスはチャイコフスキーより更にカラヤンにマッチした作曲家だ。 73年録音の「ツァラトゥストラ」では あの「2001年宇宙の旅」で著名になった冒頭部分で最高のティンパニを聴くことができる。 この録音は、トランペットが瞬間音を外しているのが残念だが その他では完璧に近い演奏を聴かせていて感動を誘う。 ここでのティンパニは、テーリヒェンという説もあるのだが ほぼフォーグラーということで決着しているようだ。 上掲のチャイコフスキーと比べると硬質の凄音が聴く者の体躯を振動させる。 3.ウェーバー「魔弾の射手 序曲」 録音:1971年 曲は序奏部のホルンが有名だが、 ティンパニを聴くのなら、なんといってもコーダ突入時のオーケストラの斉奏だろう。 全オーケストラに負けないティンパニの存在感は素晴らしい。 ドイツ・グラモフォンのシャープな録音と相まって 上掲ツァラトゥストラに劣らぬ非常に硬質な音となっている。 叩いているのはフォーグラーであろう。 4.ドヴォルザーク「新世界より」 録音:1977年 ティンパニが曲全体を支配しているわけではないのだが 印象的な聴きどころがいくつかあるので カラヤン&ベルリン・フィルのティンパニ演奏の代表的なものとして しばしば上げられる録音である。レコード会社はEMIであり 上掲ツァラトゥストラやウェーバーとはまた違った音の捉え方を 録音面で確認することができる。叩いているのはフォーグラー。 5. ブラームス「ドイツ・レクイエム」 録音:1978年(DVD) これは1978年のコンサート・ライブの模様を映像にしたもの。 映像なので奏者の顔もはっきりしていて、テーリヒェンだとすぐわかる。 中でも第2曲は弱音によるティンパニ3連打が効果的に響く名曲中の名曲。 ティンパニの名演も大迫力の音だけではないのだ。 カラヤンは録音ではフォーグラーを重用するようになったので、 70年代後半以降のカラヤン&テーリヒェンの組み合わせというのは珍しくなる。 6. ストラヴィンスキー「春の祭典」 録音:1978年 カラヤンの死後発表された凄まじいライブの記録。 CDにはベートーヴェンの交響曲第7番もカップリングされており、 それも同じように名演の呼び声が高いが ティンパニに関してはやや奥まって捉えられていて凄まじさは薄まっている。 その点この「春の祭典」はティンパニのために録られたのではないか思えるほど 轟音の収録はばっちりである。ライブにおけるフォーグラーの高揚をどうぞ。 7.ベートーヴェン「運命&田園」 録音:1969年 有名なモスクワでのライブ録音。ティンパニはテーリヒェン。 フォーグラーが入団するのが翌1970年なのでその直前の演奏ということになる。 フォーグラー入団以後、カラヤンがベートーヴェンを演奏する際には テーリヒェンが第4、7番、フォーグラーが第5、6番と叩き分けがされていたので この録音はテーリヒェンがカラヤンの棒の下で叩いた最後の運命と田園かもしれない。 地鳴りのような猛烈な音は聴いていて嬉しくなる。 因みにカラヤン&テーリヒェンのベートーヴェンでは、 この前年の68年にザルツブルクで田園&第7番という演奏を行っていて、 それは更に凄まじいのだが残念ながら今のところ海賊版でしか出回っていない。 |
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