【対決!ボルグvsマッケンロー】

 

※データはATPより引用
Bjorn Borg (SWE) vs. John McEnroe (USA)
1978-11-06 Stockholm Indoor Hardcourt SF John McEnroe (USA) 6-3 6-4
1979-01-29 Richmond Indoor Carpet SF Bjorn Borg (SWE) 4-6 7-6 6-3
1979-03-19 New Orleans Indoor Carpet SF John McEnroe (USA) 5-7 6-1 7-6
1979-04-02 Rotterdam Indoor Carpet F Bjorn Borg (SWE) 6-4 6-2
1979-04-30 Dallas Indoor Carpet F John McEnroe (USA) 7-5 4-6 6-2 7-6
1979-08-13 Toronto Hardcourt F Bjorn Borg (SWE) 6-3 6-3
1980-01-07 The Masters Indoor Carpet SF Bjorn Borg (SWE) 6-7 6-3 7-6
1980-06-23 Wimbledon Grass F Bjorn Borg (SWE) 1-6 7-5 6-3 6-7 8-6
1980-08-25 U.S. Open Hardcourt F John McEnroe (USA) 7-6 6-1 6-7 5-7 6-4
1980-11-03 Stockholm Indoor Carpet F Bjorn Borg (SWE) 6-3 6-4
1981-01-12 The Masters Indoor Carpet RR Bjorn Borg (SWE) 6-4 6-7 7-6
1981-03-23 Milan Indoor Carpet F John McEnroe (USA) 7-6 6-4
1981-06-22 Wimbledon Grass F John McEnroe (USA) 4-6 7-6 7-6 6-4
1981-08-31 U.S. Open Hardcourt F John McEnroe (USA) 4-6 6-2 6-4 6-3
Tied 7:7
Hard: John McEnroe (USA) leads 3:1
Clay: Tied 0:0
Grass: Tied 1:1
Carpet: Bjorn Borg (SWE) leads 5:3

【テニス史上の名勝負】

テニス史における最高のライバル関係として必ず名前が登場する2人である。

対戦成績は正に頂上決戦というに相応しく7勝7敗という全くの五分である。

しかも14回の対戦のうち13回が準決勝以上であり、
残る1回もトップ選手のみが出場するマスターズのRRであるから
実質全試合が頂点付近の対決であったといえる。

対戦時期はマッケンローが10代の頃からボルグの引退まで、
お互いのキャリアで重なりのある時期全てに及んでいるのだが、
年数にしてみるとわずか3年に過ぎないのは驚きであろう。
意外にも非常に短期間のライバル決戦であったのだ。
コナーズvsマッケンローの場合は実に14年にも及んでいる)

しかし3年で14回の対戦というのは非常に多い。
例えば、ボルグvsコナーズは全23回の対戦があるが、
マッケンローが登場する5年も前から行われているのだ。



【勝敗分析

 
コート別に勝敗の傾向を見てみると、
まずハードコートではマッケンロー3勝1敗とリードしている。
両者のコート別成績を見れば自然な結果といえるのだが、
初対戦で、まだ10代のマッケンローが勝利しているのは意外かもしれない。

一方カーペットでは5勝3敗ボルグがリードしている。
両者得意のコートなので対戦も多かった。
特に1980年と81年マスターズは3セットマッチとはいえ、いずれもフルセットで、手に汗握る熱戦となった。

グラスコートでは、お互い譲らず1勝1敗となっている。
どちらもウィンブルドン決勝で、恐らく多くのファンにとって両者の対戦といえば
この2試合になるのではないだろうか。

残念ながらクレーでの対戦はなかった。
スタイル的には断然ボルグ有利と思われるコートだが
マッケンローコナーズレンドルを相手に健闘を見せることもしばしばだったので
もし試合が行われていたとしたら面白い展開になったのかもしれない。

グランドスラムでは4回しか対戦していない。
わずか3年という期間限定だったし、両者とも全豪には出なかったので仕方ないだろう。
しかしウィンブルドンUSオープンで行われた対戦はいずれも決勝であり、どれもが名勝負だった。
特に1980年ウィンブルドン決勝はいまだに語り草となっているテニス史上最高の試合の一つである。
ただ、グランドスラムボルグが勝利したのはこの試合のみであった。
グランドスラムでの対戦成績はマッケンロー3勝1敗となっている。



【ランキング推移】

 
両者のランキング推移を見てみよう。

既に1977年、まだマッケンローがデビューしたての頃に、
ボルグはランキング1位を経験している。
ただ、その時はわずか1週でコナーズに取り返されてしまった。
実質ボルグがトップに君臨するのはもっと後である。

1979年にコナーズボルグは激しいランキング争いを繰り広げ、
遂に7月に、ボルグは長期政権を手に入れることに成功した。
この1979年7月からがボルグ時代ということになるだろう。

このボルグ時代の突入と同時にボルグマッケンローをリードし始める。
両者の対戦はそれまで交互に勝ち負けを繰り返していたが、
この時から1981年1月までボルグが実に5勝1敗という成績を収めるのである。

キャリアを通じてほぼ互角の勝負を見せた両者だが
力関係に傾きがあった時期も存在したという点は見逃せない。
もっとも、まだキャリアの浅い頃から、既にトップランカーであったボルグと対等に渡り合ってみせた
若きマッケンローのパフォーマンスも賞賛に値することは事実だろう。

その後、1981年に入ってから2人の力関係は逆転する。
最後の3戦はいずれもマッケンローの勝利であり、
同時にテニス界はマッケンローの時代へと移り変わっていった。



【マッケンロー登場時のテニス界】

 
70年代中盤、ランキングではコナーズに遅れを取っていたものの
ボルグこそは実質グランドスラムを支配する選手だった。

このとき、ライバルといえばもちろんコナーズであり、そしてビラスであった。
敢えて言えばボルグが両者に挑んでいったという図式になるかもしれないが
トップを競っていたのがこの3人であったという事実は疑う余地もないだろう。

この時期、テニス界には真のネットプレイヤーが不足していたといわれる。
70年代前半まではトップに多くのネットプレイヤーがいた。
レーバー、ローチ、ニューカム、スミス、アッシュ・・・
しかしそれらもコナーズの登場と共に、そしてボルグの台頭とともに力を失っていった。

辛うじてこの時代の有力なネットプレイヤーをあげるとすれば、
グランドスラムの上位常連だったゲルライティス
ビッグサーブが武器のタナー
クレー巧者でありながらネットを得意としたペッチ
本来ストローカーだがグラスコートでは技巧的なネットプレイヤーに早代わりした
旧世代の生き残りともいえるナスターゼ、などになるだろう。

ただいずれもコナーズボルグを脅かす選手にはなりきれなかった。
奇跡のネットプレーを引っさげてマッケンローが登場したのは
そういう時期であったのだ。

マッケンローの登場が、
そのコート内外における常識外れのパフォーマンスだけでなく
テニス本来のプレーという面においても人々の注目を集めたのは
実に自然のことだったと言えるのである。



【プレーの傾向】

 
史上最高のストローカーと史上最高のネットプレイヤー
その両者の対戦なので当然ストロークvsボレーという図式になった。

ボルグの技巧的なパスが針の穴を通すようにマッケンローの横を抜けていく。
マッケンローの飛びつきざまのボレーがボルグのコートに吸い込まれるように落ちる。
そういった興奮冷めやらぬ画が容易に思い浮かぶのではないかと思う。

ただ、決して両者はそうした画一的なスタイルだけで試合を披露したわけではなかった。

例えば後年のボルグ、特に1981年ウィンブルドンの試合を見返してみると
立て続けにネットダッシュを試みているのがわかる。
意表をついているわけではなく、プレーの形として取り入れているのは確実だった。
80年代には、芝生ではネットプレーが優勢であるという考えが支配的になるが
それを暗示するかのようなプレーであったといえるだろう。

またマッケンローがストローク戦で打ち合ってエースを取るシーンもみられる。
ネットに出てもよさそうなタイミングなのにも関わらず、
敢えて強引に打ち合ったりするのはマッケンローによくある癖だったが
それでも尚ポイントを取ってしまうのがこの人の凄いところだ。

両者が歴史上異例とも言えるほどにファンを興奮させたのは
ただトップ同士、ただ対照的なスタイルというだけでなく
プレーの幅とその質の高さで観るものを魅了したからだといえる。

14回の対戦というのは、3年という短期間にしては充分な回数のようではあるが、
やはり欲を言えばもっと多くの名勝負をみせてほしかった。
ボルグの早すぎる引退はつくづく残念だといわざるを得ない。


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