【レンドルvsエドバーグ】

 

※データはATPより引用
Ivan Lendl (USA) vs. Stefan Edberg (SWE)
1984-03-12 Rotterdam Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 6-3 2-6 7-6
1985-02-04 Delray Beach Hardcourt R16 Stefan Edberg (SWE) 6-4 7-6
1985-04-08 Dallas Indoor Carpet QF Ivan Lendl (USA) 3-6 7-6 3-6 6-1 6-2
1985-11-25 Australian Open Grass SF Stefan Edberg (SWE) 6-7 7-5 6-1 4-6 9-7
1986-08-25 U.S. Open Hardcourt SF Ivan Lendl (USA) 7-6 6-2 6-3
1986-10-20 Tokyo Indoor Carpet SF Stefan Edberg (SWE) 7-5 6-1
1986-12-01 New York Indoor Carpet RR Ivan Lendl (USA) 6-3 6-4
1987-06-22 Wimbledon Grass SF Ivan Lendl (USA) 3-6 6-4 7-6 6-4
1987-08-10 Montreal Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 6-4 7-6
1987-10-19 Tokyo Indoor Carpet F Stefan Edberg (SWE) 6-7 6-4 6-4
1988-11-28 New York Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 6-3 7-6
1989-03-06 Scottsdale Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 6-2 6-3
1989-04-17 Tokyo Hardcourt F Stefan Edberg (SWE) 6-3 2-6 6-4
1989-11-06 Stockholm Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 6-0 2-6 6-3
1989-11-27 New York Indoor Carpet SF Stefan Edberg (SWE) 7-6 7-5
1990-01-15 Australian Open Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 4-6 7-6 5-2 ret
1990-06-25 Wimbledon Grass SF Stefan Edberg (SWE) 6-1 7-6 6-3
1990-10-01 Sydney Indoor Hardcourt SF Stefan Edberg (SWE) 3-6 7-6 6-3
1990-10-08 Tokyo Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 7-5 6-3
1990-11-12 Frankfurt Indoor Carpet SF Stefan Edberg (SWE) 6-4 6-2
1991-01-14 Australian Open Hardcourt SF Ivan Lendl (USA) 6-4 5-7 3-6 7-6(3) 6-4
1991-04-08 Tokyo Hardcourt F Stefan Edberg (SWE) 6-1 7-5 6-0
1991-08-19 Long Island Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 6-3 6-2
1991-08-26 U.S. Open Hardcourt SF Stefan Edberg (SWE) 6-3 6-3 6-4
1992-01-13 Australian Open Hardcourt QF Stefan Edberg (SWE) 4-6 7-5 6-1 6-7(5) 6-1
1992-08-17 New Haven Hardcourt SF Stefan Edberg (SWE) 7-6(2) 4-6 6-3
1992-08-31 U.S. Open Hardcourt QF Stefan Edberg (SWE) 6-3 6-3 3-6 5-7 7-6(3)
Stefan Edberg (SWE) leads 14:13
Hard: Stefan Edberg (SWE) leads 8:6
Clay: Tied 0:0
Grass: Stefan Edberg (SWE) leads 2:1
Carpet: Ivan Lendl (USA) leads 6:4

【互角の戦い】

対戦成績はエドバーグの14勝13敗
ほとんど互角の戦いを見せている。

レンドルと10回以上戦って対戦成績でリードしている選手は1人しかいない。
その意味ではエドバーグは稀有の選手と言えるだろう。

レンドルエドバーグは年齢差が6歳と結構離れているが、
エドバーグのプロデビューが早かったので対戦は比較的多かった。

2人がそれぞれに強さを見せ付けた1987年は印象的だ。
ウィンブルドンではエドバーグが1回戦で:6-0 6-0 6-0 という試合を見せ
同年の全米では今度はレンドルが1回戦で:6-0 6-0 6-0 という試合を披露した。
最終的にレンドルが1位、エドバーグが2位となった年だった。

毎年直接対決も多く行われ、両者勝ち負けを繰り返していたが、
1980年代に関していえばレンドルが優勢だったといえる。
1987年ウィンブルドンでレンドルが勝利しているのには注目だ。

その後もトップ争いは続けられるが、
1990年に入ると、エドバーグが夏場にまとめて優勝を重ね、
ついにレンドルから1位の座を奪い取り、その帝王時代に終止符を打つこととなった。

レンドルが力を失ってからも2人は異例とも言える多さで対戦を繰り返した。
1991年と1992年の2年連続で、全豪、全米両大会で対戦している。
力を失っていながらも、その時の最強選手であるエドバーグと当たるまで
負けなかったレンドルを褒めるべきだろうか。

結局、最後に行われた4つの対戦全てでエドバーグが勝利し、
最終的な対戦成績を逆転させるに至ったのである。



【息をもつかせぬ名勝負】

 
タイプの異なる選手同士の対戦なので見ごたえがあった。
時にはどちらかが一方的に勝ってしまうこともあったが、長い試合も多かった。

全豪では、1985年、1991年、1992年と三度もフルセットの攻防を演じた。
最後の対戦となった1992年の全米でも、
最終セットのタイブレークにまでもつれ込む大熱戦になっている。

基本的にはストローク対ネットプレーという図式になるが
両者共に技巧に長けていたので、
アプローチやストローク戦などでも様々なテクニックが飛び出した。

同じネットプレイヤーであるエドバーグマッケンローを比べた場合、
決定的に違うのはスピードだと言えるだろう。
ストローク戦でもネットダッシュでもエドバーグの足の速さは印象的で
レンドルとのフットワーク勝負は見応えがあった。
レンドルはベースラインから、エドバーグはネット際から繰り出すドロップショット、
お互いに得意としていたショトだが、機を見て繰り出されるこのショットは
打たれたほうが猛然とダッシュしてそれを拾い、
そのままラリーが続く様と合わせて見ていて興奮させられた。

両者はお互いに評価しあっていたが、
特にエドバーグレンドルを欠点のない完璧な選手と呼んでいて、
立場が逆転した90年代以降でも「レンドルには常に挑むつもりで対戦している」と語った。



【エドバーグという選手】


エドバーグは、勝つ時は圧勝するが負けるときは誰にでも負けるという印象がある。
実際に試合を観ても、誰にも止められないくらい圧倒的に強い時もあるのだが、
誰にでも負けるただの選手に見えることもあった。

主要選手との対戦成績を示すと以下のようになる。

対戦成績
コナーズ6勝6敗
マッケンロー6勝8敗
ビランデル9勝11敗
ベッカー10勝25敗
シュティッヒ6勝10敗
イバニセビッチ9勝10敗
アガシ3勝6敗
クーリエ4勝6敗
サンプラス6勝8敗
チャン12勝9敗

全体的に負け越しているのがわかる。

 
特にコナーズマッケンローとの対戦成績は、
エドバーグのデビューが早かったことを差し引いても、強さを印象の薄いものにしている。
というのも、ベッカーを始めとするエドバーグと同世代の選手達は
この先代の選手たちにほとんど負けていないからだ。

また、より若い世代に対しても全体的に負け越しているため、
勝ちきれない特徴が出てしまっている。


しかしこれは、エドバーグが息の長い選手であったことを示しているとも言える。
マッケンロー時代からサンプラス時代までトップ争いをしていたことになる。
むしろサンプラスに対してなど、比較的よく勝っていたといえるだろう。


ただ一人、苦手といえる選手がいる。ボリス・ベッカーだ。
一般に両者はライバルとされているが、対戦成績からはライバルというより天敵とさえ思える。
ただ、大事な局面での対戦などを考慮すると決してその限りではないのだが。
この辺については別項目として取り上げたい。
(詳細は【対決!ベッカーvsエドバーグ】を参照)


さて、エドバーグの息の長さは記録としても表れている。
グランドスラムの出場数で54試合連続というトップクラスとしては破格の記録を保持していたのだ。
2013年にフェデラーに抜かれるまでNo.1経験者としては最長の記録を誇っていた。



【プレースタイル】


完全なるネットプレイヤー

サーブには通常よりも大きな回転をかけた。
強烈なスピンにより、バウンド後にボールが高く跳ね上がるキックサーブと、
フォア側に切れるスライスサーブとを織り交ぜて組み立てを行った。
エースを狙うよりも次のボレーで決めるためのサーブだった。
本気で打てばより速い球も打てたと思うがフラットサーブはほとんど使わなかった。

エドバーグは、この優れたキックサーブのおかげで、
他の誰よりも優れたセカンドサーブを持つ選手となった。
しかしこの強烈なスピンは背中に大きな負担をかけており、
エドバーグは最後に故障を抱えてしまった。

 
ボレーは史上最高のものだ。常にマッケンローと並び称される。
エドバーグのボレーには重さは無かったが、切れとスピードがあり、より広角に打つことができた。
マッケンローのような天才的で独特の打ち方ではなく、基本に忠実なものだった。
マッケンローのボレーは誰も真似できなかったが、エドバーグのボレーは誰の手本にもなった。
ネット際での守備範囲も広いので、ネットプレー総合ではマッケンロー以上との見方もあるようだ。

欠点もあった。スマッシュがそれほど上手くなかったことだ。
もちろん史上屈指のネットプレイヤーにしては、ということではあるが。
サーブの打ち方がスピンをかける特殊なものだったので、スマッシュでもその打ち方になってしまい、よくミスをした。

フォアハンドストロークは、
わきを空けて人差し指で引っ掛けるようなスイングで、威力の無いショットだった。
バックハンドに比べてミスも多かったが、そもそも決定打に使う気のないこのショットは、
つなぎの球としては充分で、リターンやアプローチ、追い込まれたときのパスなどでは効果を発揮した。

事実、エドバーグリターンはかなり優れたもので、
威力よりもコーナーに返すことを重視したショットは速いコートで特に効果的で、
同時代の多くの選手を凌駕するものだった。

ボレーと並ぶ、エドバーグ最高のショットがバックハンドだ。
片手打ちから繰り出される強打は、他のどのストローカーにも劣らぬものだった。
あくまでもネットプレーヤーなので、強打の頻度は多くなかったが、
パスやリターン、クレーコートでのストローク戦などで絶大な威力を発揮した。

 
同じく優れた片手打ちバックハンドを持つレンドルと比較すると、
威力や、広角に幅広く打てる点ではレンドルのほうが上だろう。
しかしエドバーグのバックハンドは、速い球に食い込まれながらも強く返したり、
追いつきざまにボールをコントロールしたりする、
セミ・ハードヒットとも言うべき打ち方ができ、より汎用的だったと言える。
このような場合、レンドルはスライスを効果的に使ったが、
エドバーグはトップスピンでも対応することができたのだ。

もっとも、エドバーグスライスのバックハンドも優れたものを持っていた。
最高のネットプレイヤーは最高のアプローチショットを持っていなければならない。
マッケンローは緩やかなタッチショットでネットに付く時間を稼いだが、
エドバーグの頃は、そのような相手にハードヒットを許すショットではダメだった。
時間を稼ぎながらも、威力でも劣ることのないショットが必要であり、
その理想が、滑るような鋭いエドバーグバックハンドスライスだった。
レンドルのスライスも優れたものだったが、リターンやパスに特化したショットで
コントロールはずば抜けていたが威力はそれほどでもなかった。
それに比べてエドバーグは、しっかりと体重をかけ、重さ、回転ともに充分だった。
ストローク戦やアプローチで絶大な効果を発揮した。

レンドルエドバーグ共に自分のスタイルに合ったバックハンドを持っている。
トップスピンとスライスのバランスが取れており、双方を併用することで
最高のバックハンドとの評価を確立していたといえる。

エドバーグは足の速い選手だった。
特に前に詰めるスピードは他の追随を許さなかった。
ネット際での反応速度も素晴らしく、至近距離からのクーリエの強打を、
いとも簡単にボレーで返したショットは今も忘れられない。


【コラム】【対決!ベッカーvsエドバーグ】も要チェック!

戻る


このページに対するご意見等は まで。