【レンドルvsイバニセビッチ】

 

※データはATPより引用
Goran Ivanisevic (CRO) vs. Ivan Lendl (USA)
1989-03-06 Scottsdale Hardcourt QF Ivan Lendl (USA) 6-4 6-4
1990-01-08 Sydney Hardcourt R16 Ivan Lendl (USA) 6-4 6-2
1991-08-26 U.S. Open Hardcourt R16 Ivan Lendl (USA) 7-5 6-7(3) 6-4 6-2
1992-02-10 Brussels Indoor Carpet R16 Ivan Lendl (USA) 6-7(5) 7-5 6-4
1992-06-22 Wimbledon Grass R16 Goran Ivanisevic (CRO) 6-7(7) 6-1 6-4 1-0 ret
1992-10-12 Tokyo Indoor Carpet QF Ivan Lendl (USA) 6-3 6-4
Ivan Lendl (USA) leads 5:1
Hard: Ivan Lendl (USA) leads 3:0
Clay: Tied 0:0
Grass: Goran Ivanisevic (CRO) leads 1:0
Carpet: Ivan Lendl (USA) leads 2:0

【レンドルの技巧】

レンドルの5勝1敗。

対戦のほとんどはレンドルが全盛期を過ぎてからのものだったが、
レンドルイバニセビッチを巧みに料理した。

ウィンブルドンで1度負けているが、この時は故障によりレンドルが途中でリタイアしているので
事実上、イバニセビッチレンドルに勝っていないことになる。

イバニセビッチも力のある選手だったが、
勢いで押してくる選手をかわすのはレンドルの得意とするところだった。

イバニセビッチの武器はサーブとバックハンドだが、
レンドルは深いリターンとストロークでそれを封じ込めた。

いつの試合だか忘れてしまったが、イバニセビッチがネットに詰めたとき、
レンドルがフォアハンドのスライスでパスを打ったプレーがあり、これには驚かされた。
強打が来ると予想していたイバニセビッチも、完全にタイミングを外された瞬間だった。

レンドルの巧みな組み立ては、手玉に取られたほうとしては面白くない。
イバニセビッチ「ネットに出てこないレンドルのプレースタイルは古い!」
とまくし立てたこともあった。
もっとも、後に冷静にレンドルの偉大さを賞賛している。



【波の激しい選手】


イバニセビッチは、当たっているときは手が付けられないので、
調子さえよければ最強だ、と考えた人もいるだろう。

しかし、調子を維持するというのも強さの秘訣である。
イバニセビッチの調子の波は実に短いスパンで上下した。
大会毎や季節毎どころではなく、プレー中でも突然調子を落とした。
これさえなければ、と残念に思える選手だった。

プレースタイルはデビュー当時から完成されており、その後もほぼ一貫していた。
つまり始めから力が備わっていたわけで、これで安定感さえ加わればどんどん強くなるはずだった。
キャリア初期の頃はサンプラスアガシよりも強く、対戦成績も上回っていた。

しかし、実際に安定感が備わることはなく、
結局、始めから強かったものの、更に強くなっていくことのできなかった選手だったといえる。

ランキングの最高位は2位だが、常にトップを争うには至らなかった。

調子を狂わされると弱いので、技術力のあるストローカーにはよく負けた。

対主要ストローカー戦。

名前対戦成績
アガシ3勝4敗
クーリエ3勝8敗
チャン5勝6敗
ムスター3勝3敗
カフェルニコフ10勝5敗
モヤ1勝3敗
クエルテン2勝6敗

かつて、アガシイバニセビッチ「サーブとバックハンドのクロスだけ」と評したが、
その言葉が示すように、サーブさえ凌げれば勝機はあったといえる。
唯一カフェルニコフには勝ち越してるが、そう技巧的な選手ではなかったので納得できる。

また、イバニセビッチと同タイプの他のビッグサーバーとの対戦でも傾向がわかりやすい。

名前対戦成績
ベッカー9勝10敗
シュティッヒ2勝5敗
サンプラス6勝12敗
ロセ10勝4敗
ルゼドゥスキー9勝1敗
クライチェク9勝3敗
フィリポーシス3勝2敗

やはり、技術力の高かった選手に負け越している。
それでもベッカーとはほぼ互角の好勝負だった。



【プレースタイル】


ビッグサーバーの代名詞ともいえる選手。

90年代は、サーブのみで試合が決まるので
テニスが面白くなかった時期だとよくいわれるが、
その見方からすれば、面白くなくした張本人だといえるだろう。

ポイントを取るときはサービスエース。取られるときはミスショット
しかし、これこそがイバニセビッチのテニスの真骨頂であった。


サーブは歴代最高のもので、サービスエースを取ることにかけては右に出るものはいなかった。
スピードが速かったのはもちろんだが、長身の上に球種も豊富だったので、
コースが幅広く、ワイド方向に決めるのが得意だった。
また、どの選手よりも速いセカンドサーブを打ち、セカンドサーブでもエースを取ることができた。
特徴的なクイックサーブは、リターン側にとってタイミングを取ることが難しかった。
ただ、球そのものに重さは無く、他のビッグサーバーよりも軽い球だったので、
追いつきさえすれば、リターンは返しやすかったといえる。
しかし、エースをとる技術は最高で、今もってイバニセビッチを超えるサーブは無い。


サーブに次いで重要なショットが両手打ちのバックハンドだ。
特に高めの球をクロスコートに叩き込む威力は強烈だった。
また、速い球に対してはブロックショットも持ってたので、見事なリターンを決めることもあった。
片手打ちのスライスも器用にこなした。

逆にフォアハンドは得意ショットではなかった。よく卓球のような打ち方などといわれたが
腕の振りだけでラケットを上げるのでバックハンドほどの威力が無く、よくミスもした。

ストロークも安定していた選手だが、ビッグサーブを活かすため、
やはりサーブアンドボレーをプレーの基本にしていた。
両手打ちよりも片手打ちのほうがネットプレーに向いていると言われるが、
イバニセビッチは両手打ちでもネットプレーを巧みにこなした。
「ルコントを起用にしたような選手」と評されたことがあったが、よく言い当てていると思う。

フットワークは特筆するものではなかったが、遅くもなかった。
長身でリーチがあったので取り立てて足が速い必要もなかったろう。


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