【レンドルvsシュティッヒ】

   

※データはATPより引用
Michael Stich (GER) vs. Ivan Lendl (USA)
1989-06-12 London / Queen's Club Grass QF Ivan Lendl (USA) 6-4 4-6 6-3
1990-08-27 U.S. Open Hardcourt R64 Ivan Lendl (USA) 6-4 5-7 6-3 6-3
1991-02-11 Philadelphia Indoor Carpet QF Ivan Lendl (USA) 6-2 7-6(7)
1991-02-18 Memphis Indoor Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 7-5 6-3
1991-08-26 U.S. Open Hardcourt QF Ivan Lendl (USA) 6-3 3-6 4-6 7-6(5) 6-1
1993-04-26 Munich Clay F Ivan Lendl (USA) 7-6(2) 6-3
1993-05-03 Hamburg Clay QF Michael Stich (GER) 6-3 6-2
Ivan Lendl (USA) leads 6:1
Hard: Ivan Lendl (USA) leads 3:0
Clay: Tied 1:1
Grass: Ivan Lendl (USA) leads 1:0
Carpet: Ivan Lendl (USA) leads 1:0

【対レンドルに有効なプレースタイル?】

レンドルの6勝1敗。

シュティッヒは、サーブが速く、技巧的で何でもこなす選手だった。
フォアハンドよりもバックハンドが強く、ストロークは決めに行くよりもつなぐタイプで、
ネットプレーを得意とし、フットワークを巧みに使った選手だった。
こうしてみると、エドバーグに近いことがわかる。サーブの速いエドバーグといえる選手だ。

それだけに、対レンドルに非常に有効なプレースタイルなのではないかと期待できたが、
意外にもほとんど歯が立たなかった。
やはり最終的には技巧に封じ込められてしまった形になるだろうか。

それでも、内容には惜しいものもあり、
同じように歯が立たなかった選手たちと比べれば、よく対抗していたといえる。



【シュティッヒという選手】


シュティッヒはデビューが遅かった。
同じドイツのベッカーとは1歳しか年齢差がないにも関わらず
ATPツアーに登場したのは1989年になってからだった。
この年ベッカーは3度目のウィンブルドンを取っており、
3歳年下のサンプラスでさえその前年の1988年にデビューしていた。

選手生命は決して長いとはいえなかったわけだが、それでもいくつか印象的な活躍をみせた。
1991年にウィンブルドンで優勝し、1996年には全仏で決勝に進出した。
この両大会で決勝に進出できた選手はそういない。
また、全米でも決勝進出の経験があるので、
どのコートでも安定した成績を収めていたことがわかる。

コート別の勝率をみると、グラスコートのみ78%を超える優秀な成績なのは目を見張るが、
その他の3種類はでいずれも66%台〜68%台と非常に安定した数字となっている。
1991年と1993年には4種類全てのコートで優勝するという記録を残している。

ランキングも最高2位にまで上り詰めたが、常に勝ち続ける選手ではなかった。
それは主要な選手との対戦成績にも表れている。


シュティッヒは、サンプラスに勝ち越している(5勝4敗)数少ない選手だった。

   
イバニセビッチ(5勝2敗)エドバーグ(10勝6敗)には強かったが、
ベッカー(4勝8敗)には大きく負け越していた。

      agassi-7a.jpg(4661 byte)
また、クーリエ(7勝5敗)ムスター(3勝2敗)には勝ち越していたが、
アガシ(0勝6敗)カフェルニコフ(3勝8敗)を苦手としていた。

コート別では安定していたが、対戦相手別では安定していなかったという、面白い成績を持つ選手だ。



【プレースタイル】


例に漏れず、90年代を代表するビッグサーバーだが、
同タイプの多くの選手よりネットへの比重が大きかった。

サーブは、無理のないスイングから打ち出され、フォームも綺麗だった。
スピードは非常に速く、既に90年代前半に210km/hというサーブを連発していた。
また、スライスやスピンといった回転の種類も豊富だったので
エースを取るだけでなくネットプレーにつなげるサーブも打つことができた。
模範的なサーブを持つ選手だったといえる。

セカンドサーブでも、サービスダッシュを行う回数は、
同タイプのサンプラスベッカーに比べて多かった。

ネットプレーがプレーの基本だったので、ボレーは非常に上手かった。
タイプ的にはエドバーグサンプラスの中間のようなボレーだった。
また、力強いバックハンドドライブボレーは快心のショットだった。
片手打ちバックハンドでドライブボレーを打つ選手はそういない。

フォアハンドは、レンドルサンプラスのように
肘先行のテイクバックを使ったが、威力はさほどでもなかった。
腕を前に押し出す感じで、打つというより当てるというスイングだった。

一方、バックハンドは強力な武器で、
ハードヒットでアガシクーリエと互角に打ち合うことができた。
シャープなスイングはエドバーグに近く、よりトップスピンがかかった球だった。
威力もコースも充分で、速い球にも打ち負けなかったので、どんな種類のコートでも有効だった。
また、ペース配分においてはスライスも効果的に利用した。

フォア、バックとも合わせるショットが巧みだったので、
サービスリターンは上手かった。

フットワークは、ストローク戦も無難にこなせるものであり、
前に詰めるスピードは速かった。


シュティッヒは、90年代ビッグサーバーとしては珍しくネットプレーヤーの要素の強い選手で、
もちろんパワーもあったが、よりテクニックを駆使するタイプの選手だった。
各ショットにおける無理のないフォームは手本になり、個人的にも非常に好きな選手だった。


【コラム】【ビッグサーバーの歴史】も要チェック!

戻る


このページに対するご意見等は まで。